今回は京都のアプリ開発チーム「room6」を取材しました。長年の夢だった「自社ゲーム」。700万円かけて開発した「とっとこダンジョン」。累計売上はいくらなのか。
【11/25 追記】room6さまの都合により、記事内容を一部修正しました。
※room6 代表 木村征史さん(左)、デザイナーさん(右)
1、「とっとこダンジョン」について
「room6」について教えてください。
受託開発の仕事をやりながら、ゲームアプリを開発しています。現在は、僕(エンジニア)とデザイナーの2名で会社として活動しています。一人で夜中までプログラミングしていますよ。
起業してもうすぐ丸5年です。「ゲームつくってから死にたい」と思い、「room6」を立ち上げました。人生も後半戦に差し掛かってきたので。
今年だした「とっとこダンジョン」が、本格的につくった、最初の自社ゲームですよね?
そうですね。ずっと受託開発をやっていたので。前々からゲームつくりたかったんですけどね。
それで、今年つくったゲームが「とっとこダンジョン」です。だから、ようやく「表舞台」に立てた嬉しさがあって。何をやっても楽しいです、今は。
セミですね。ようやく土から出てきたセミが、ミンミン鳴いているんです。1週間は鳴くとおもいますよ。鳴き終わったら、すぐ死ぬかもしれませんが。笑
「とっとこダンジョン」の調子はどうですか?
「とっとこダンジョン」は、今年1月にリリースして、ダウンロード数でいうと、2万ダウンロードくらい(iOS12,500、Android7,500)ですね。ほんと、泣かず飛ばずで。
開発については、3人で8ヶ月ほどかけてつくりました。開発コストは700万円くらいはかかっています。
開発に700万円かけて、売上はどのくらいなんですか?
売上はですね、(累計で)14万円ほどです。課金が5万円で、広告収入が9万円くらい。つまり、686万円の赤字です、投資回収率でいうと2%。ひどいですよね。
だから、いま「排水の陣」ですよ。というか、もう「ゾンビ」なんです。本当は死んでるはずなのに活動してる。そんな感じですね。資金繰りもスレッスレで、いつもヒヤッヒヤしています。
2、ゲームアプリを出してみて。
こういう状況だと、現実的に「つらくなるとき」はどんなときですか。
現実的に「売上の集計表」をつけているときが、一番悲しくなりますよ。普通は「売上集計」ってニヤニヤしながらやるものでしょ? でも、うちは涙しか出てこない。
「今月の売上は、えーっと…はっぴゃく、870円か。ふぅ〜」って。「870円って、この表つけてる時給で消えるわ」って。勉強のためにつけてますけど。
ブログで「とっとこダンジョンの売上」を、公開したのはなぜだったんですか?
あれは、やけくそになって書きました。「世の中、景気の良い話ばかりじゃない。これが現実じゃあ!」って言いながら、アプリの売上の数字とかを、ブログにバンバン貼ってみたんです。
正直なところ、半分くらいは「ライバルを減らしてやろう」という気持ちでした。「甘い気持ちのやつは、これ見てやめてしまえ」と。
ところが、そのブログが、あまりにかわいそうだったからか、励ましになったのか、アプリ開発者の人たちは注目してくれました。そこから「アプリ開発者の飲み会」に誘っていただいたり。
実際「自社アプリ」を出してみて、感想としてはどうですか?
実際にゲームをだしてみて、衝撃だったのは「ダウンロード数が全然伸びない」ということ。ありがたいことに、メディアに掲載いただくことは度々あるんですよ。
例えば「とっとこダンジョン」が、天下の「AppBank」さんに掲載されたとき。「わあー、AppBankに載ったぞ!バンザーイ、バンザーイ!」と盛り上がりました。
2年前くらいに「AppBankで紹介されて、ランキング5位まで上がった」という景気の良い話を、聞いていたので、その感覚でいたんですよね。
ところが次の日、ダウンロード数をみたら「あれ、500ダウンロードしか上がってない」「おかしいな、0がふたつくらい少ない。0どっかいっちゃったのかな?」となりました。
でも、これはどのメディアでも同じ。名だたるゲームメディア、「AppBank」「4gamer」「ファミ通」、どれに掲載されても「500ダウンロード」くらいしか増えませんでした。
一番は「アプリの質」が高くないのが原因ですが、これだけ「パズドラ」や「モンスト」が流行っていると仕方ないかなと。そりゃ、みんなブースト広告に走りますよね。
※もちろん「ゲームのおもしろさ」に大きく影響される。
3、プロモーションやイベント出展について
プロモーションも、いろいろ試されているんですよね。
プロモーションも色々やりましたね。もがいてもがいて、あまり変わらず。まず、「Admob(バナー広告)」に6万円つかいました。これは、100ダウンロードくらいしか増えませんでした。
「ツイッター広告」にも5万円つかいましたが、ピクリともしませんでしたね。もう計測する気も起きないくらい。なんも効果なかった。文言が良くなかったかもしれません。
あとは「YouTuber」のプロモーションもやりました。「iCON CAST」というサービスで10万円ちょっとつかって、YouTuberさん2人に「ゲーム実況動画」をあげてもらって。
結果としては、1万回ほど再生されて、300ダウンロードくらいは増えましたけどね。
他に「露出を増やす」という意味で、やってきたことはありますか?
ゲーム関係のイベントは、積極的に出ています。例えば「Bitsummit」は、お祭りみたいで楽しかったです。インディーズの方と交流できたり、メディアさんに掲載いただいたり。なにより「無料」でしたし。
「東京ゲームショウ」も出展されているのですよね。
はい、「東京ゲームショウ」のインディーゲームコーナーに出展しています。これも抽選ではありますが「無料」ですね。
ただ「旅費」が高かったです。うちは京都なので。滞在費(2人)が、新幹線とホテル代で25万円くらいかかりました。ノベルティ(バッジ・チラシ・装飾など)は、せいぜい5万円くらいです。
「インディーゲームコーナー」の出展者は、いわゆる「ガチインディー」みたいな方々が半分以上いらっしゃいました。「PS4のゲームをガチでつくってます」みたいな。
「イベント出展するときのコツ」って何かあるんでしょうか。
「イベント出展のコツ」ですか? まずは、お茶と水をいっぱい飲むことですかね。喉が枯れて、口が口内炎になるから。ほんとに。
あと「ブースは派手」に限ります。派手じゃないと、人もメディアも寄ってこない。チラシとノベルティだけではダメです。あと、おっさんが待ち構えているよりも、女の子がいたほうが良い。
ノベルティは、意外と「チロルチョコ」が喜ばれました。「デコチョコ」っていうアプリから、写真をアップすると、簡単につくれました。値段も手頃で、24個で2,500円くらいですね。
4、今後や次回作について
いま「次回作のアプリ」もつくっているんですか?
そうですね、来月に「ここっとダンジョン」というアプリがでる予定です。とりあえず「イラスト」はカワイイんですよ。見てください、これが「ココ」ちゃんで、こっちが「ユニ」ちゃん。
これは「room6」のデザイナーの子が描いてくれました。僕だけではこんなに頑張れなかったと思いますので、本当に感謝しています。
「キャラクター」は、随分かわいくなったんですね。
本当に、かわいいは正義ですよ。「ここっとダンジョン」では、かわいいアイコンをつくったら、「事前予約サイト」での予約数が、すごく伸びました。「グラフィックは大事だな」と実感しました。
今回は10万ダウンロードはいきたいです。ていうか、10万ダウンロードいかないとヤバい。「自分の人件費」を抜きに考えても、また200万円くらいかけていますから。
木村さん的には「アプリでうまくいくイメージ」はあるんですか。
そうですね、「根拠のない自信」はあるんですよねえ。だから、なんというか「それを信じて、素直に頑張っている」という感じです。
僕なんて「三流エンジニア」だから。アプリで売れてる人たちにはオーラがあるので「僕にはなれへんなあ」と思ったりはするんですよ。別世界の住人というか、スーパーサイヤ人ばっかり。
だから「違う階段」を登らないとダメでしょうね。エスカレーターじゃなくって、階段をのぼります。非常階段かもしれません。でも、がんばり続けていれば、少しは花開くかなと。
いまの夢は「ゲームで食べていくこと」です。つくったゲームの収益で、ちゃんと自分たちにお給料が払えること。そうなったら「言うことなし」です。
木村さんからみて「アプリ開発」はオススメですか?
うーん…どうでしょうか。「個人の副業」なら良いと思いますよ。でも、会社の事業としてはどうですかね。
個人で独立するとしたら「売れなくても、ゲームつくるの楽しい」という人じゃないと、続けていくのは厳しいと思います。まあ、私が言えた話じゃないんですけどね。
取材協力:room6